波長分波器の多機能化に関する研究(1994年~1998年)

1.はじめに
 本研究は,岡山県立大学情報通信工学科の坂本豊和准教授と実施した研究である.
 現在,波長分割多重伝送用の光デバイスとしてアレイ導波路回折格子を用いた小型波長合分波デバイスが広く用いられているが,当時は,屈折率分布型レンズなどの微小光学素子を用いた波長分波デバイスが広く研究されていた.
 本研究では,このような微小光学素子を用いた波長分波デバイスに多点光スイッチ機能や光分岐機能(スターカプラ機能)を付加した多機能な波長分波デバイスを試作すると共に特性評価を行った.以下に波長分波デバイスの試作例を紹介する.

2.多点光スイッチ機能を有する波長分波デバイスの試作[1]
 図1に試作したデバイスの構造を示す.本デバイスは,光ファイバを星形に並べた入出力光ファイバアレイ,屈折率分布型レンズ,そして,プリズムと回折格子を組み合わせたグリズムで構成される.
 光ファイバアレイの中央に配置された入力ファイバに波長多重された光を入射すると,入射光は屈折率分布型レンズを通過する間に平行化されてグリズムに入射する.この光は,グリズムの端面に設けられた回折格子で波長ごとに異なった角度で反射(回折)される.屈折率分布型レンズを戻る間にレンズの半径方向に配置された出力ファイバに波長ごとに分かれて集光する.その結果,入力された波長多重光は,波長ごとに分波されて異なった出力光ファイバ(CH1, CH2, CH3, CH4, CH5, CH6, CH7)から出力される.ここで,光軸を中心にグリズムを回転させると,光が出力されるファイバの列(SW1, SW2, SW3, SW4, SW5, SW6)を切り換えることができる.
 図2に試作したデバイスの写真と入出力ファイバの端面写真を示す.本研究では,光学素子を微動装置に取り付けてデバイスを構成しているが,パッケージング技術を確立することで小型化が期待できる.なお,入出力ファイバアレイの端面写真は,全ての光ファイバに光を送り,光学顕微鏡で観測した.
 本研究で得られたデバイスの主な性能は,次のとおりである.分波チャンネル数(7チャンネル),スイッチチャンネル数(6チャンネル),動作波長帯(0.64~0.88 μm),3dBバンド幅(18~22 nm),分波チャンネルの波長間隔(35~42 nm),各分波チャネルの最小伝送損失(7.0~12.6 dB),チャンネルクロストーク(<-10 dB).

図1 多点光スイッチ機能を有する波長分波デバイス.

図2 デバイスの写真と入出力ファイバアレイの端面写真.

3.スターカプラ機能を有する波長分波デバイスの試作[2]
 図3に試作したデバイスの模式図を示す.本デバイスは,図2に示したデバイスと同様,入出力光ファイバアレイ,屈折率分布型レンズ,そして,グリズムで構成される.ただし,グリズムが6面体のピラミッド形になっている点が図2のデバイスと異なる.
 光ファイバアレイの中央に配置された入力ファイバに波長多重された光を入射すると,入射光は屈折率分布型レンズを通過する間に平行化されてピラミッド形のグリズムに入射する.ここで,入射光が6分割される.分割された光は,それぞれ回折格子で波長ごとに異なった角度で反射(回折)され,レンズの半径方向に配置された出力光ファイバ(CH1, CH2, CH3, CH4, CH5, CH6, CH7)に集光する.ここで,6分割された光は,それぞれ異なった方向に配置した出力ファイバの列(F1, F2, F3, F4, F5, F6)に結合する.その結果,光分岐と波長分波が同時に達成される.
 図4に試作したデバイスの評価実験系の写真と入出力ファイバの端面写真を示す.本デバイスに用いる入出力ファイバアレイには,図2のデバイスより高い配置精度が要求される.本試作では,出力ファイバの配置角度を改善している.
 本研究で得られたデバイスの主な性能は,次のとおりである.分波チャンネル数(7チャンネル),分岐チャンネル数(6チャンネル),動作波長帯(0.62~0.88 μm),3dBバンド幅(13~24 nm),分波チャンネルの波長間隔(36~45 nm),最小過剰損失(7.4~17.2 dB),チャンネルクロストーク(< -10~-15 dB).

図3 スターカプラ機能を有する波長分波デバイス.

図4 評価実験系の写真と入出力ファイバアレイの端面写真.